「攻め」のカスタマーサクセス組織が事業を成長させる。カスタマーセールス/マーケティングとは??

事業成長の一手として従来から議論されているCS(カスタマーサクセス)について、現在新たな可能性を見出す企業様が増えてきております。
今回は、新たな可能性として議論される「カスタマーセールス」「カスタマーマーケティング」について、なぜ注目されているのかという背景から、概要、また導入へ向けたステップまで一挙解説いたします。
「攻め」のCS(カスタマーサクセス)組織の実現を目指す企業様は是非ご覧くださいませ。
目次
はじめに:なぜ今CS(カスタマーサクセス)組織が注目されているのか?
背景
カスマターサクセスという概念の浸透に伴い、CS(カスタマーサクセス)組織を立ち上げる企業/事業が非常に増えてきております。
同時に、多くの成長企業が新規顧客の獲得コストの高騰が続く中で、既存顧客のLTV最大化へ注目されております。
※AIの発達により、プロダクト開発などのスピードが大幅に上がり、どのような領域においても競合企業が生まれやすくなっております。それにより、CAC(顧客獲得コスト)が高騰しております。
※市場の大きさという壁にぶつかり、レイトマジョリティ以降の開拓を推進することを余儀なくされ、CAC(顧客獲得コスト)が高騰しております。
上記のような背景により、顧客のLTV最大化をカスタマーサクセス組織によって実現する、ということに現在非常に注目がされております。
従来のCS(カスタマーサクセス)組織の課題
ケイパビリティの問題
従来のCS(カスタマーサクセス)組織は、カスタマーサポートの色を強く引き継いでいることにより、担当する人材(カスタマーサクセス担当者)がLTV最大化のための営業活動、マーケティング活動を推進できない。というケースが非常に多くございます。
上記のより、結果としてCS(カスタマーサクセス)組織がサポート機能のみを担い、アップセルやクロスセルをを目的とした営業活動をできない、またチャーン回避のためのマーケティング活動をできないなどの状況に至っている組織は非常に多いです。

KPIの問題
CS(カスタマーサクセス)組織のKPIが解約率の低減に向いているケースが多く、攻めの指標(アップセル/クロスセル)へKPIを置いている組織は少ないかと思います。
上記により、CS(カスタマーサクセス)組織に所属する方々は、能動的な攻めの施策の推進へ意識が向かない状態が続いております。
部門連携の問題
攻めの施策を推進するには、CS(カスタマーサクセス)組織だけではなく、他の組織(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、など)との連携は必要不可欠です。
特に、アップセル/クロスセルを推進するには、フィールドセールスが受注段階から該当顧客の組織内への展開余地、提案余地をヒアリングし、CS(カスタマーサクセス)組織への連携を実施するべきです。
ただ、そのような連携を前提に組織を作っている企業が少ないことにより、実態は受注時に機械的にCRM上で引き継がれるケースなども多いかと思います。
上記のような部門連系の薄さにより、攻めの施策推進ができていないCS(カスタマーサクセス)組織は多いです。

今後のCS(カスタマーサクセス)組織の目指すべき形とは?
役割の分解
前述の通り、既存のCS(カスタマーサクセス)組織が守りの施策も推進しつつ、攻めの施策も同時に推進することは人材のケイパビリティの問題により難しいです。
そのため、今後はCS(カスタマーサクセス)組織の中でも役割を分解し、下記のような3つの組織を作る必要があります。
- カスタマーサポート
- 概要:顧客のオンボーディングや問い合わせ対応などを受動的に対応する守りの組織
- KPI:オンボーディング完了率、問い合わせ対応のスピード/完了率、など
- カスタマーセールス
- 概要:アップセル/クロスセルの推進を担う、営業のケイパビリティを強く持つ攻めの組織
- KPI:アップセル/クロスセル金額、案件創出数、など
- カスタマーマーケティング
- 概要:チャーンレートの低減を目的にした施策を能動的に行う、マーケティングのケイパビリティを強く持つ攻めの組織
- KPI:顧客のヘルススコア、チャーンレート、など
項目 | カスタマーサポート | カスタマーセールス | カスタマーマーケティング |
概要 | 受動的な顧客対応 | 能動的な既存顧客むけ の営業活動 | 能動的な既存顧客むけ マーケティング活動 |
目的 | 顧客満足度向上 | 既存顧客からの 新規売上創出 | 既存顧客の 解約率低減 |
連携部署 | – | フィールドセールス (インサイドセールス) | マーケティング |
KPI例 | ・オンボーディング完了率/スピード ・問い合わせ対応のスピード/完了率 など | ・アップセル/クロスセル金額 ・案件創出数 など | ・顧客のヘルススコア ・チャーンレート など |
役割分解のメリット
各機能の専門化とKPIの明確化
CS(カスタマーサクセス)組織に求められるサポート機能、セールス機能、マーケティング機能、それぞれに組織が専門的になり、結果としてパフォーマンスの向上が見込めます。
また、各組織がそれぞれの役割にマッチするKPIを保有することになるため、KPIの管理がしやすくなります。
部門関連系の強化
CS(カスタマーサクセス)組織が分解されることにより、連携すべき部門が明確になります。
例)
・カスタマーセールス⇨フィールドセールス組織
・カスタマーマーケティング⇨マーケティング組織
上記のより、部門関連系を強化することができ、パフォーマンス向上につながります。
実現のステップ
要件整理/KPI策定
実現へ向けて、必ず自社の事業に合わせた要件整理とKPI策定を実施いただきたいです。
必須で考えていただくべき要件とKPIは以下です。
対象顧客の整理
全ての顧客へ向けてカスタマーセールス/カスタマーマーケティング施策を実施することは非常に非効率であり、
アップセル/クロスセルが見込める顧客ペルソナの要件、カスタマーマーケティングによりチャーンレートの低減を推進すべき顧客ペルソナの要件を整理する必要があります。
※便宜上、アップセル/クロスセルの実現可能性がある企業ペルソナをTier1~Tier2、アップセル/クロスセルの実現可能性が低くチャーンレートの低減だけを目指すべきペルソナをTier3と表現します。
例)
▼ Tier1企業:〜〜〜〜のような企業を指す。
・担当組織
⇨カスタマーセールス(ハイタッチでアプローチ)
・KPI例
⇨アップセル/クロスセル金額
⇨パイプラインの金額/案件数
⇨保有企業数
▼Tier2企業:〜〜〜〜のような企業を指す。
・担当組織
⇨カスタマーセールス(角度が高い企業へハイタッチでアプローチ)
⇨カスタマーマーケティング(ロータッチでアプローチ)
・KPI例
⇨アップセル/クロスセル金額
⇨パイプラインの金額/案件数
⇨保有企業数
▼Tier3企業:〜〜〜〜のような企業を指す。
・担当組織
⇨カスタマーマーケティング(ロータッチ/テックタッチでアプローチ)
・KPI例
⇨オンボーディング完了率/スピード
⇨ヘルススコア
⇨チャーンレート
オペレーションの要件整理
顧客の受注後、どのように顧客の要件を振り分けて、どのように各組織が引き継ぐのか、またそれをどのように管理するのか(CRMの利用など含む)を、事前に整理する必要があります。
また、カスタマーサポート、カスタマーセールス、カスタマーマーケティングの組織連系と、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスなどの部門連携のオペレーションも整理する必要があります・
小規模パイロットの実施/検証
要件整理/KPI策定後は、まずは小規模パイロット組織で実施/検証しましょう。
期間は、3ヶ月〜6ヶ月のイメージで取り組むケースが多く、カスタマーセールス/カスタマーマーケティングをそれぞれ0.5~1人月のリソースなどで小規模で検証します。
検証すべき項目は下記です。
※下記は必須の内容であり、その他企業ごとに項目を検証するケースが多いです。
ROI
発生コストに対して、ROIが合うかどうかを検証する必要があります。
例)
検証結果、カスタマーセールス1名(コスト100万/月の想定)が平均13万円のNew MRRを毎月創出できる見込みである。
※チャーンレートは2%である。
⇨創出LTVは650万円である。そのため、100万のコストで650万のLTVを創出しているため、ROIは合うだろう。
※上記計算はその他のコストなどは無視しております。
※ROIの合うor 合わないのラインは各社によります。
オペレーションの再現性
各施策が属人かせず、プロセスを再現性高いものとして推進できるかを検証する必要があります。
※エンプラ向けの全社展開を目的としたアップセル/クロスセルの活動は一部属人的な活動は生まれる想定です。
特にカスタマーセールス組織は人員の拡大余地が大きな部分となりますため、業務フローを設計し、プロセスにもKPIを設計できるかどうかなどの観点を検証する必要があります。
▼プロセスKPI例
・保有顧客向け1to1架電数
・保有顧客向け1on1ミーティング実施数
・アップセル/クロスセル提案数
など
部門連携の実現性
FS↔︎カスタマーセールス組織、マーケティング↔︎カスタマーマーケティング組織の連携の実現性を検証する必要があります。
特に、FSよりカスタマーセールス組織へ受注時にアップセル/クロスセルの実現へ向けて必要な情報を連携いただくなど、必須のプロセスがありますので、その点を既存組織の方々が協力いただけるのかを検証する必要があります。
勝ちパターン化/拡大
前述のプロセスを踏んだ上で、該当組織への採用or移動を推進し、組織の拡大を実現しましょう。
まとめ
既存顧客からの収益性拡大が事業成長にとって必要不可欠となっている今、CS(カスタマーサクセス)組織の強化が非常に重要となっています。
そんな中、既存のCS(カスタマーサクセス)組織の課題が浮き彫りになり、CS(カスタマーサクセス)組織の変化が求められている企業も多くいるかと思います。
今回はそんな中で重要となる、役割の分解、そしてカスタマーセールス、カスタマーマーケティングの組織構築について解説させていただきました。
弊社は、カスタマーサクセス支援サービスを提供させていただいており、
多くの会社のカスタマーセールス組織立ち上げ、カスタマーマーケティング組織立ち上げをご支援させていただいております。
パイロット組織の立ち上げなど、社内のリソース/ナレッジだけでは推進が難しい領域も多くございます。
もしお困りごとがございましたら、事例情報など最大限ご共有いたしますので、是非お問い合わせくださいませ。