「攻め」のカスタマーサクセス組織が事業を成長させる。カスタマーセールス/マーケティングとは??
事業成長の一手として従来から議論されてきたCS(カスタマーサクセス)について、「攻めの組織」への転換を検討する企業が急増しています。今回は、その中核概念である「カスタマーセールス」「カスタマーマーケティング」に焦点を当て、なぜ今注目されているのかという背景から、具体的な導入ステップまで解説します。
既存顧客のLTV最大化・NRR(売上継続率)向上を本気で目指す企業の営業企画・営業部長の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
はじめに:なぜ今CS(カスタマーサクセス)組織が注目されているのか?
背景
カスタマーサクセスという概念の浸透とともに、CS組織を立ち上げる企業・事業は急速に増加しています。それと同時に、多くの成長企業が新規顧客獲得コスト(CAC)の高騰という壁に直面し、既存顧客のLTV最大化へと戦略の重心を移しつつあります。
背景には2つの構造的な要因があります。
① 競合激化によるCAC高騰
AIの発達によりプロダクト開発スピードが大幅に向上した結果、あらゆる領域で競合が生まれやすくなっています。広告・商談コストが膨らみ、新規獲得のROIが悪化の一途をたどっています。
② 市場飽和によるレイトマジョリティ開拓の難化
イノベーター・アーリーアダプター層の獲得が一巡し、購買意欲の低いレイトマジョリティ層の開拓を余儀なくされた企業では、さらにCACが高騰しています。
こうした環境変化により、「新規獲得」から「既存深耕」への戦略転換が不可逆的な流れになっています。その実行部隊として、CS組織への期待が急上昇しているのです。
従来のCS(カスタマーサクセス)組織が抱える3つの構造的課題
①ケイパビリティの問題
従来のCS(カスタマーサクセス)組織は、カスタマーサポートの色を強く引き継いでいることにより、担当する人材(カスタマーサクセス担当者)がLTV最大化のための営業活動、マーケティング活動を推進できない。というケースが非常に多くございます。
上記のより、結果としてCS(カスタマーサクセス)組織がサポート機能のみを担い、アップセルやクロスセルをを目的とした営業活動をできない、またチャーン回避のためのマーケティング活動をできないなどの状況に至っている組織は非常に多いです。

②KPIの問題
CS(カスタマーサクセス)組織のKPIが解約率(チャーンレート)の低減に向いているケースが多く、攻めの指標(アップセル/クロスセル)へKPIを置いている組織はまだ少数派です。
③部門連携の問題
攻めの施策を推進するには、CS(カスタマーサクセス)組織だけではなく、他の組織(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、など)との連携が必要不可欠です。
特に、アップセル/クロスセルを推進するには、フィールドセールスが受注段階から該当顧客の組織内への展開余地、提案余地をヒアリングし、CS(カスタマーサクセス)組織への連携を実施するべきです。
FSが受注段階から展開余地・提案余地をヒアリングし、CS組織へ引き継ぐプロセスが必要です。
しかし、そのような連携を前提とした組織設計をしている企業は少なく、受注時にCRM上で機械的に引き継がれるだけ、という実態が多くあります。

カスタマーマーケティングとは?
カスタマーマーケティングとは、既存顧客の解約(チャーン)を防ぎ、顧客ロイヤルティを高めるためのマーケティング施策を能動的に推進する、マーケティング機能を担うCS組織の一形態です。
顧客のヘルススコアを継続的にモニタリングし、離反リスクの高い顧客に対してロータッチ・テックタッチでの施策(メール配信・ウェビナー・活用支援コンテンツなど)を展開します。
| 項目 | 内容 |
| 目的 | 既存顧客の解約率(チャーンレート)低減・LTV最大化 |
| 主なKPI | 顧客ヘルススコア・チャーンレート・NPS |
| 連携部署 | マーケティング組織 |
| アプローチ | ロータッチ・テックタッチ(スケーラブルな施策) |
今後のCS(カスタマーサクセス)組織の目指すべき形とは?
役割の分解:3機能への分割が成功の鍵
前述の通り、既存のCS(カスタマーサクセス)組織が守りの施策も推進しつつ、攻めの施策も同時に推進することは人材のケイパビリティの問題により難しいです。
そのため、今後はCS(カスタマーサクセス)組織の中でも役割を分解し、下記のような3つの組織を作る必要があります。
- カスタマーサポート
- 概要:顧客のオンボーディングや問い合わせ対応などを受動的に対応する守りの組織
- KPI:オンボーディング完了率、問い合わせ対応のスピード/完了率、など
- カスタマーセールス
- 概要:アップセル/クロスセルの推進を担う、営業のケイパビリティを強く持つ攻めの組織
- KPI:アップセル/クロスセル金額、案件創出数、など
- カスタマーマーケティング
- 概要:チャーンレートの低減を目的にした施策を能動的に行う、マーケティングのケイパビリティを強く持つ攻めの組織
- KPI:顧客のヘルススコア、チャーンレート、など
| 項目 | カスタマーサポート | カスタマーセールス | カスタマーマーケティング |
| 概要 | 受動的な顧客対応 | 能動的な既存顧客むけ の営業活動 | 能動的な既存顧客むけ マーケティング活動 |
| 目的 | 顧客満足度向上 | 既存顧客からの 新規売上創出 | 既存顧客の 解約率低減 |
| 連携部署 | – | フィールドセールス (インサイドセールス) | マーケティング |
| KPI例 | ・オンボーディング完了率/スピード ・問い合わせ対応のスピード/完了率 など | ・アップセル/クロスセル金額 ・案件創出数 など | ・顧客のヘルススコア ・チャーンレート など |
役割分解の2大メリット
①各機能の専門化とKPIの明確化
サポート・セールス・マーケティングそれぞれの機能が専門組織として独立することで、パフォーマンスの向上が見込めます。各組織が役割に最適なKPIを保有するため、管理・評価もシンプルになります。
②部門関連系の強化
CS(カスタマーサクセス)組織が分解されることにより、連携すべき部門が明確になります。
例)
・カスタマーセールス⇨フィールドセールス組織
・カスタマーマーケティング⇨マーケティング組織
連携ルートが明確になることで、情報の抜け漏れや属人的な対応が減り、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
「攻め」のCS組織構築:実現のステップ
STEP1:要件整理/KPI策定
まず、自社事業に合わせた要件整理とKPI策定を行います。
STEP2:対象顧客の整理(Tier分類)
全ての顧客へ向けて一律のカスタマーセールス/カスタマーマーケティング施策を実施することは非常に非効率です。
アップセル/クロスセルが見込める顧客ペルソナの要件、カスタマーマーケティングによりチャーンレートの低減を推進すべき顧客ペルソナの要件を整理する必要があります。
※便宜上、アップセル/クロスセルの実現可能性がある企業ペルソナをTier1~Tier2、アップセル/クロスセルの実現可能性が低くチャーンレートの低減だけを目指すべきペルソナをTier3と表現します。
例)
▼ Tier1企業(例:年間契約500万円以上・複数部門での利用実績あり・グループ会社への展開余地が高い企業)
KPI例:アップセル/クロスセル金額、パイプライン金額/案件数、保有企業数
担当組織:カスタマーセールス(ハイタッチでアプローチ)
▼Tier2企業(例:年間契約100〜500万円・単一部門利用・条件次第で拡大余地あり)
KPI例:アップセル/クロスセル金額、パイプライン金額/案件数、保有企業数
担当組織:カスタマーセールス(角度の高い企業へハイタッチ) + カスタマーマーケティング(ロータッチ)
▼Tier3企業(例:年間契約100万円未満・利用頻度が低く、現時点では拡大よりも継続維持を優先すべき企業)
KPI例:オンボーディング完了率/スピード、ヘルススコア、チャーンレート
担当組織:カスタマーマーケティング(ロータッチ/テックタッチでアプローチ)
※上記の数値はあくまで例示です。自社の契約単価・事業モデルに合わせて調整してください。
STEP3:オペレーションの要件整理
受注後の顧客振り分けフロー、各組織間の引き継ぎ方法、CRMでの管理設計を事前に整理します。カスタマーサポート・カスタマーセールス・カスタマーマーケティングの内部連携と、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスとの外部連携、両方のオペレーションを設計することが必要です。
STEP 4:小規模パイロットの実施・検証(3〜6ヶ月)
要件整理後は、まず小規模パイロットで検証します。カスタマーセールス・カスタマーマーケティングをそれぞれ0.5〜1人月程度のリソースで立ち上げ、以下3点を検証します。
①ROIの検証
発生コストに対して、ROIが合うかどうかを検証する必要があります。
例)
検証結果、カスタマーセールス1名(コスト100万/月の想定)が平均13万円のNew MRRを毎月創出できる見込みである。
※チャーンレートは2%である。
⇨創出LTVは650万円である。そのため、100万のコストで650万のLTVを創出しているため、ROIは合うだろう。
※上記計算はその他のコストなどは無視しております。
※ROIの合うor 合わないのラインは各社によります。
②オペレーションの再現性
施策が属人化せず、プロセスとして再現できるかを検証します。特にカスタマーセールスは人員拡大の余地が大きい組織であるため、業務フローとプロセスKPIの設計が重要です。
※エンプラ向けの全社展開を目的としたアップセル/クロスセルの活動は一部属人的な活動は生まれる想定です。
▼プロセスKPI例
・保有顧客向け1to1架電数
・保有顧客向け1on1ミーティング実施数
・アップセル/クロスセル提案数
など
③部門連携の実現性
FS→カスタマーセールス、マーケティング→カスタマーマーケティングの連携が実際に機能するかを検証します。特に受注時にFSから必要情報が連携されるかどうかは、実運用での検証が不可欠です。
STEP5:勝ちパターン化・組織拡大
パイロット検証で成果が確認できたら、採用・異動による組織拡大を推進します。
まとめ
新規獲得コストの高騰が続く今、既存顧客からの収益拡大はあらゆるBtoB企業にとって最重要課題の一つです。その実行体制として、CS組織をカスタマーサポート・カスタマーセールス・カスタマーマーケティングの3機能に分解し、それぞれを専門組織として機能させることが、LTV最大化・NRR向上の最短ルートとなります。
株式会社Growth DXは、カスタマーサクセス支援サービスを通じて、350社以上のカスタマーセールス・カスタマーマーケティング組織の立ち上げ・運用支援を行ってきました。パイロット組織の設計から、要件整理・KPI策定・オペレーション構築・部門連携の実装まで、一気通貫でご支援します。
「社内リソースだけでは推進が難しい」「どこから手をつければよいかわからない」という段階からでも対応可能です。支援事例や具体的なアプローチ方法を含む資料を無料でご提供していますので、お気軽にご連絡ください。
ご支援内容(例)
・カスタマーサクセス組織の現状診断
・カスタマーセールス・カスタマーマーケティング組織の要件整理・KPI設計
・パイロット組織の立ち上げ支援(0→1フェーズ)
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