【2024年最新版 ABM解体新書】ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の基礎知識から成功の秘訣を紐解く

継続的な事業成長を実現するための手段として昨今注目されているABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策について、 今回概念、取り組むべき企業とは、取り組むにあたって進め方、利用可能なテクノロジー(ツール)、落とし穴、など一挙解説いたします。

ABMに取り組みたいが、何をすれば良いかわからない、取り組んでいるがうまく立ち上がらない、など様々なフェーズの方々へお役立ちできる内容となっております。

最後に、ABM施策におけるチェックリストや、そもそも自社が取り組むべき施策を診断するマーケティング施策診断などお役立ちできるコンテンツもご用意しておりますので、是非ご確認ください。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)戦略/施策とは?

概念紹介

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)戦略/施策とは、特定の高価値顧客アカウント(企業・団体)に焦点を当てたマーケティング戦略のことを指しています。 特定の企業に対するカスタマイズ性の高いアプローチを実現することで、成果につなげます。

リードベースドマーケティングとの対比

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)と対をなす戦略/施策として、リード・ベースド・マーケティングがございます。

比較表アカウント・ベースド・マーケティングリード・ベースド・マーケティング
ペルソナアカウント(企業)課題を持っている個人
売るもの企業に提供できるプロダクト/サービスは全て特定の課題を解決できるプロダクト/サービス
アプローチアカウントを決めてアプローチ幅広い見込み客に対して、網羅的にアプローチ

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策が注目されている背景

マーケット環境の問題 単一のマーケットに対して、多くのプロダクト/サービスが乱立するマーケット環境において、課題を持った個人に対するマーケティング戦略のROIが下がりつつあります。 そのため、他社がリーチできないペルソナに対してアプローチする、アカウント・ベースド・マーケティングが注目されています。

テクノロジーの観点 ABM施策を成功させるには、アカウントの情報を多く蓄積し、アカウントに対して常にコミュニケーションを取る必要があります。 従来のテクノロジーでは、上記をすべて人力で管理する必要があり難易度が非常に高かったことに対し、現在テクノロジーが発展したことによりアカウントごとのステークホルダーの情報蓄積、顧客とのテクノロジーを通じたコミュニケーション、などを実現できるようになりました。 上記理由より、アカウント・ベースド・マーケティングが注目されています。

日本国の文化の観点(アメリカとの対比) アメリカなど海外の国はトップダウンの意思決定文化であることに対し、日本はボトムアップの意思決定文化であることが多いです。 ABM施策の成功を実現するには、後ほど解説しますがアカウント内のキーマンを作ることが重要です。それを踏まえ、キーマンを作るという観点において、海外のように経営層をキーマンにすることよりも、日本のような担当者をキーマンにする方が難易度が低いです。 そのため、日本という国の意思決定の商習慣的にアカウント・ベースド・マーケティング施策が適しているということも、ABMが注目されている背景になります。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策を取り組むべき会社(フェーズの観点、プロダクトやサービスの観点)

事業フェーズの観点で取り組むべき会社様

イノベーター、アーリーアダプターへのリーチをしたのち、より急激な事業成長を実現する1つの手段として取り組まれるケースは多いです。 上記のパターンの場合の多くは、初期にSMBマーケットに対してリード・ベースド・マーケティングにてリーチし、認知と導入社数などの実績を得た上で、MID〜エンプラ企業へ次のフェーズとしてアプローチする、というケースが多いです。

プロダクト・サービスの観点で取り組むべき会社様

バーティカルなサービス、そもそもエンプラ企業でないと導入できないサービス(経営企画部門、DX部門、IR部門、など向け)、などは初期からABM施策に取り組むケースが多いです。

取り組むべきでない会社様

LTVが小さいサービス/プロダクトの場合は、そもそもABM施策に取り組むべきではないです。理由は、ABMは個社ごとにカスタマイズ性の高いアプローチを行うことで、工数が多くかかり、優秀な人材も必要とする分、1社当たりの開拓コストが大きくなりやすいです。 そんな中、受注した場合のLTVが小さいとROIが合わない結果となるため、ABMに取り組むべきではないです。

顧客のペルソナを限定できないプロダクト・サービスの場合もABMを取り組むべきではないです。 ABMはアカウントを特定することが最も最初のステップとなります。そんな中、アカウントに傾向がない、ペルソナを絞り込めない場合は、精度の高いABMを実行できなくなるため、ABMに取り組むべきではないです。

比較表ペルソナの観点収益性の観点
ABMに取り組むべきペルソナが外的情報からも一定の絞り込みが可能であり、
明確である。
例)ペルソナ=従業員数1000名以上の製造業、かつ海外に工場を持つ会社
アカウントあたりのLTVがmin500万以上 など
※500万は営業利益を指しています。
ABMに取り組むべきではないペルソナが明確でない。
例)ペルソナのセグメントを着ることが難しい、HP制作やシステム開発などはこちらに当てはまることが多い。
アカウントあたりのLTVが499万以下 など

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策実施の全体像

STEP1:アカウント特定

自社がアプローチすべきアカウントを特定し、リスト化します。 リスト化の方法は大きく2種類あります。

1つ目
企業情報をもとにしたリスト化 企業情報取得サービスなどを利用して、業種、業界、エリア、売上、利益、拠点数、採用情報、などをもとに、一定のセグメントを切りアカウントを特定します。 その後、対象のアカウントの中でも「収益性のポテンシャル」という軸、「投資意欲/該当領域における課題の顕在化」という軸の2軸で、アプローチの優先度(Tierと表現することが多い)を整理します。

2つ目
営業担当(アカウントエグゼクティブと表現されることも多い)目線の特定 後述いたしますが、ABM施策において重要な要素の一つとして、クロージングを担当する営業担当のスキルやモチベーションがあります。 理由は、ABM施策は1社に対して1年以上の期間を経て受注する、などの長期戦になるケースが多い分、営業担当がそこまで長い期間をかけて顧客と接点を持ち続ける必要があるためです。 そうした際に、営業担当が受注したい会社を開拓する、といった形の方が営業担当ならではの「一次情報をもとにした判断である」点と、「長期間の営業活動を品質高く行うことができる」点より、最適であるケースも多く、 その場合は営業担当がアプローチすべきアカウントの特定とTierの整理を行います。

Tierのイメージ(表はあくまでも一例になりますので、各社によってTierの定義は異なります。)

投資意欲高投資意欲低
収益性高Tier1Tier3
収益性低Tier2Tier4

※参考※
Tier1:アプローチすべき対象
Tier2:既存でコネクションがある場合は、アプローチをする対象
Tier3:インバウンドがあった時にはアプローチすべき対象
Tier4:ABM施策としてのアプローチは対象外
などと定義されることが多い

STEP2:アカウントプランの作成

アプローチすべきTier1アカウントに対するアカウントプランをプランニングします。 プランニングすべき項目として、少なくとも下記項目がございます。
①意思決定に関わるステークホルダーの情報
・キーマン:社内で導入を推進いただく、いわば協力者のような立場となっていただける担当
・決裁者:導入の判断をする担当
・利用者:導入後、実際にサービス・プロダクトを利用いただく担当
・インフルエンサー:導入にあたり、社内に影響力がある担当
弊社はストーカーマップというマップを作成の上で、上記を整理しています。
是非、コピーの上でご利用ください。

②アカウントのポテンシャル
・対象のアカウントは現在どのようなことに、どのようなコストを投資しているか
・対象のアカウントは、未来どのようなことに、どのようなコストを投資する可能性があるか

③min3年間のタイムスケジュール
・どのタイミングで
・どのようなアプローチを行い
・結果としてどのような成果を得るのか
などを3年間のスパンなどで良いので、プランニングする必要があります。

④リレーション
・すでに保有しているリード情報
社内の誰が、誰に(もしくは誰を介すると誰に)つながっているor繋がることができるのか

STEP3:アプローチ

アプローチの優先度は下記になります。

  1. Tier1企業であり、すでにキーマンとのリレーションがある会社
  2. Tier1企業であり、すでに担当者とのリレーションがある会社
  3. Tier1企業であり、リレーションはないもののポテンシャルが高い会社
  4. Tier1企業であり、リレーションがなくポテンシャルが低い(or不明)な会社
  5. その他

アプローチの順番は下記になります。
①タッチポイントの構築
対象のアカウントに入り込む接点を作ります。 ※あくまでもタッチポイントですので、商談化や目先の受注を目指すわけではなく、接点となる担当向けにお役立ちできる情報をお届けすることを最優先する必要があります。

代表的に手段は下記になります。
・顧問(その他リファーラル)紹介
・セールスレター
・SNS
・BDR

②タッチポイントの拡大
該当企業に対するステークホルダーの情報取得率を高めます。
最初のタッチポイントを持った方がステークホルダーの方々に紹介しても良いと判断いただくためのアプローチをする必要がございます。

代表的な手段は下記になります。
・オフラインイベント(ゴルフコンペ・会食などの役職者でないと参加できないイベント)
・ステークホルダー向けの提案書作成(周囲に紹介したいと感じていただけるような資料を作成することで、紹介いただく)
・お役立ち情報の定期配信(周囲の方々に展開したいと感じていただける情報を提供し続ける)

③タッチポイントの強化
タッチポイントを強化し、営業に繋げることができる状態に引き上げます。

代表的な手段は下記になります。
・オフラインイベント(ゴルフコンペ・会食などの役職者でないと参加できないイベント)
・座談会やMeetUpなどの小規模の会
・複数回の商談+提案

上記の3つのSTEPを通じて、実際の提案活動に繋げてアカウントに即した提案を実現する必要があります。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策のフェーズごとの変化とKPI

ABMはフェーズが大きく5フェーズに分かれており、各フェーズで追う必要があるKPIも異なります。

フェーズ1ABM施策立ち上げ期

概要
・ABM施策がフィットするマーケット選定をするフェーズ
・ABM施策における最適なKPI設計を模索するフェーズ
・ABM施策における最適な組織構築をするフェーズ

置かれるKPI
・対象アカウントに対するリードのカバレッジ率/リードの獲得数
=タッチポイントをどれだけ持てたか
・対象アカウントに対するキーマンリードのカバレッジ率・リードの獲得数
=タッチポイントをどれだけ広げることができたか
・対象アカウントとの面談実施数とネクストアクションの設定数
=対象アカウントとの商談後、継続的なタッチポイントにすることができたかどうか

フェーズ2ABM施策成長期

概要
・前述した3項目がマッチして、シンプルに事業が伸びるフェーズ

置かれるKPI
・対象アカウントとの面談実施数とネクストアクションの設定数
=対象アカウントとの商談後、継続的なタッチポイントにすることができたかどうか
・案件化数(率)と見込み収益
=対象アカウントへの商談から実際に検討フェーズにいたる数(率)とそこから今期、来期に見込める収益
・売上
=対象アカウントから創出した受注によって生まれる売上

フェーズ3ABM施策停滞期

概要
・ペルソナ向けのカバレッジ率が高まり、全てのCVRが下がる
・アプローチできる対象企業が少なくなり、従来のアプローチをしていると商談化率、案件化率、受注率、などの全てのCVRが下がってしまうフェーズ。

置かれるKPI
・フェーズ2と同様

フェーズ4ABM施策再生長期

概要
・ペルソナの細分化を図り、より細かなアカウント特性に合わせたマーケティング施策実施のよる再成長を実現できるフェーズ
※イメージ※
従来:Tier1~4まで4分類 など
新規:Tier1α〜Tierr1e〜Tier4eまで20分類 など

置かれるKPI
・細分化したペルソナに対するコンテンツ数
※イメージ※
従来:建設業界の売上UP施策一覧!
新規:左官工事業界の売上UP施策一覧! 電気工事業界の売上UP施策一覧!
・停滞顧客(過去タッチポイントを持つも、案件化しなかった顧客)の案件化率
・細分化したアプローチによるデット案件をどれだけアクティブ化できたかどうか
・案件化数(率)と見込み収益
・対象アカウントへの商談から実際に検討フェーズにいたる数(率)とそこから今期、来期に見込める収益
・売上
=対象アカウントから創出した受注によって生まれる売上

フェーズ5 プロダクトの変化

・SOMには一定リーチしきり、TAMにリーチできるようプロダクトをより良くするフェーズ
以降はフェーズ1~5を繰り返す

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策に役立つツール/システム

前述の通り、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)はテクノロジーの発展にが大きく寄与しております。 そのため、ABMの成功を実現するにはテクノロジーの活用が必須でありますが、従来のABMツールはペルソナの選定にフォーカスしたものが多く、ABMに必要なツールが正しく選定されていないケースが多く見受けられます。 そのため、下記にABMのSTEPごとに必要なツールを解説します。

アカウント特定

企業情報取得ツール

企業情報を取得可能なツールです。 ユーソナー、スピーダ、Musubu、SalesMaker、など企業情報を取得するためのテクノロジー活用が必要になります。

企業の行動情報取得ツール

SalesMaker、スピーダ、ユーソナー、などのインテントデータや、IR情報、採用情報などの、アクティブ情報を取得するためのテクノロジー活用が必要になります。

アカウントプランの作成

社内情報の取得ツール

infoboxやSalesMaker、Linkdin、などの部署情報、担当者情報をリサーチ可能なツールの活用が必要になります。
SanSan、ユーソナー、などのアカウントごとのリレーションを整理するためのツールの活用が必要になります。
Salsforce、HubSpotなどの企業情報の蓄積と、アカウントプランの可視化を図るCRMツールの活用が必要になります。

アプローチ

CXOへ直接リーチ可能な顧問サービス(テクノロジーの文脈を一部外れますが)の利用が必要になります。
CXOレターサービスなどの、バイネームへ直接リーチできるサービスの利用が必要になります。

HubSpotやPardotなどの、顧客ごとに最適なコンテンツを定期的のお届けし、顧客の行動を計測可能なMAツールの活用が必要になります。

顧客とのタッチポイントを持った際の記録を蓄積させるために、MiitelやZoomphoneなどの、顧客との通話を可視化するCTIツールや、アンプトークやAI GIZIROKU、ACES Meetなどの商談記録ツールの活用が必要になります。

アカウントごとの営業フェーズやネクストアクションなどを可視化するために、Salsforce、HubSpotなどのSFAツールの活用が必要になります。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策のよくある課題

ISとFSとマーケの連携の問題

ABMに取り組む際に、よくある間違いとしてISが取り組む施策となることです。
ABMは、本来マーケ、IS、FS、がABM専属のチームを作って取り組む必要がある中でISのみで取り組んだ場合、タッチポイントを作ったのちの、タッチポイントを広げるフェーズ、タッチポイントを深めるフェーズが機能せず、結果として売上に繋がらないケースが多いです。

ABM施策を成功させるにあたっての理想の体制は下記になります。
パターン1
→ABM専任のマーケ担当とセールス(ISとFSは分けない、もしくはISとFSはペアを組んで共通のKGIを追う)担当で、ABM専任チームをつくる。
パターン2
→ABM専任のセールス(ISとFSは分けない、もしくはISとFSはペアを組んで共通のKGIを追う)担当がABM専任チームを立ち上げ、既存のマーケ

KPIの問題

The Model(MODEL)型の営業組織を元々引いていた会社の場合は、 マーケ=MQLの創出 IS=SQLの創出 FS=New MRRの創出 CS=チャーンレートの低減 などをKPIにひいているケースが多くございます。
ただ、「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)施策のフェーズごとの変化とKPI」に記載の通りABMにおいては全く異なるKPIを求められます。 そのため、KPIを間違って設定してしまうと、結果として売り上げにつながらないABM施策となる可能性が高いです。

参考資料:2024年9月20日 ITトレンドEXPO登壇資料

また、もう1点重要な要素として、人事評価があります。 ABMを取り組む場合、短期的なKPIを追うことが難しいケースが多く、人事評価が短期的な成果に紐づいていると、結果としてメンバーのモチベーションの低減や離職につながる可能性があります。 そのため。KPIと同じく人事評価の連携も重要な要素となります。

スキルセットの問題

ABMは長期的な顧客とのリレーションづくりが重要になります。 そのため、短期的な物売りが得意な営業担当をアサインした場合、得意なスキルセットのミスマッチが生まれる可能性があります。
ABMを成功させるには、クライアントワーク力の高い、顧客貢献にモチベーションを感じる担当をアサインすることが成功につながる可能性を高めます。

まとめ

ABM施策をやるべき企業
→収益性の高いアカウントが明確であり、LTVが大きなプロダクト・サービスをお持ちの会社様は取り組まれることを推奨いたします。

ABM施策を取り組む際の重要ポイント
→最適なテクノロジーの活用、ABMの成功に向けたステップを理解する管理者のアサイン、ABMのミッションを持つチームの組成、KPIの最適化、などが挙げられます。

Growth DXは、ABM施策の全体像設計は勿論ですが、
具体の施策の代行(レター施策、BDR施策、コンテンツ制作、MA運用、イベント企画運営、など幅広く)までABMにおける様々な領域をご支援しております。
ABM施策に取り組むにあたり、ナレッジ、リソース、など過不足がある際は是非お気軽にご相談ください。

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